見て見て。これが、うちのエミール。
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てへへ、ぬいぐるみさ。
大の大人の男が、ぬいぐるみですかい?
旦那ぁ?
いや、大人の男だって、ぬいぐるみ、
可愛がったっていいだろっ!
本物の犬を飼う事ができるような生活ではないけど、
わたし、Giovanni、無類の犬好きなのである。
本物の犬の代わりに、このぬいぐるみの
エミール君が、わが家を守ってくれている。
エミールという名前には、大切な思いでがある。
20年前に、滞在していた、フランスのコミュニティーで、
わたし、Giovanniの最初の担当修道士が、
ブラザー・エミールだった。
カナダ生まれの、とても聡明で、繊細な印象を持つ人で、
良い意味でも、コミュニティーの中で、
エリートっぽい感じがする人だった。
わたしが住んでいた、Le Puits(井戸という意味)という
名前の付いた家には、
他に、メキシコ人のMarioとGeraldoが住んでいて、
我々3人と、ブラザー・エミールとで、
週に2回、読書会をしていたのだが、
まだ、そこでの生活に日の浅かったわたしには、
退屈な、夕方の30分だったことを、覚えている。
その後、わたし、Giovanniは、
そのLe Puitsの管理人の仕事を任される事になり、
ブラザー・エミールとの、二人三脚が、
一年位、続いた。
このコミュニティーは、
キリスト教の、旧い修道院の伝統を受け継いだ共同体で、
一日に3度ーー朝食前、昼食前、そして夕食後ーーの、
お祈りの時間がある。
夕食後の祈りは、一時間ほどで、修道士たちが退堂し、
その後、会衆たちが残って、静かに、時には、深夜まで続く。
ところが、ある日、修道士たちが皆、退席した後、
ブラザー・エミールだけが、残っていたことがあった。
何か、特別な役割があってとか、そういう様子ではなく、
頭を低く垂れて、ただ、祈り続けているようだった。
その彼の姿は、見ようによっては、
何か苦悩に満ちたようにも、
また、何かに癒されるのをひたすら待ち望んでいるようにも、
見えた。
普段のブラザー・エミールとは、
別人のような、その白いローブを身に纏った後ろ姿に、
わたし、Giovanniは、いたたまれない気持ちを
感じざるを得なかった。
彼の為に、何ができるだろう?
わたしの答えは、ただ一つだった。
それから、何十分もの間、
わたしは、彼のすぐ後ろで、一緒に祈ったのだった。
どれだけの沈黙が、礼拝堂に流れただろうか。
ブラザー・エミールは、
静かに立ち上がり、退堂していった。
彼と、わたしの心に、
何かしら、熱い思いが流れたのを、
わたしは感じながら、
わたしも、自分の家へ、帰って行った。
自分の部屋のドアを開けようとしたとき、
ドアの下に、小さな紙片を見つけた。
『ありがとう。Giovanni』
ブラザー・エミールの筆跡だった。
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うちの愛犬、エミールが、
わが家へ最初にやってきたとき、
当たり前のように、エミールと、名付けた。
もちろん、ブラザーの名前を取って付けたのは、
説明するまでもない。
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わたし、Giovanniがフランスを去ってから、
18年が経った。
その後、コミュニティーを二度訪ねたが、
最後に訪ねた10年前には、生憎、
ブラザー・エミールは、旅へ出ていて会う事が
できなかった。
明日は、わたしが、最初にコミュニティーへ到着した日から
ちょうど20年の日である。
ブラザー・エミールに、メールを送ってみようと思う。
2 件のコメント:
こんばんはー!
giovanniさんちのエミールくんは、あみぐるみ?かな。かわいいねー。
Le puitsで思い出した!
お菓子の名前、puits d'amour っていうやつがあります。東京のケーキ屋さんにも
あるかもしれません。
cavacavienさん
bon soir!
あみぐるみではないですが、毛がくるんくるんに
縮れた感じなんです。
puits d'amourって、どんなお菓子なんだろう?
ネットで調べてみます。
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