
今回の旅の、そもそものきっかけは、
M子叔母から、わたし、Giovanniの母への誘いから始まった。
M子叔母は、母の一番上の兄の奥さんで、
30年近くも前に、夫(つまり母の兄)を亡くした後、
自分の健康状態のこともあり、
早々に、海岸沿いにある老人ホームに入居して、
悠々と暮らしておられる。
長女次女はとうに結婚し、
末っ子である長男のGちゃんの結婚はどうなるのかしら?
と、やきもきもしつつ(恐らく)
まぁ、自分の事は自分で考えてるでしょうね、
と、持ち前の大らかな心で構えておられたのだと思う。
Gちゃんは、もう20年近くも前に、仕事を辞して、
学生時代から好きで通っていた西表島に、本格的に移住し、
環境庁のイリオモテヤマネコの保護の仕事などを経た後、
今は、西表島エコツーリズムセンターで働いている。
そのGちゃんが、いよいよ結婚することになり、
しかも、赤ちゃんも授かったというのを聞いたのは
いつだっただろうか?
十数年も会っていない、南の果ての島にいる従兄弟のこと、
と、何かお伽噺でも聞くように、
ぼんやりと母からその報告を聞いたと覚えている。
そんなお伽噺が、突然、非常な現実味を帯びてきた。
Gちゃんの奥さんになる、Mちゃんの東京の実家でのお産の後、
母子が西表島に帰ったら、
M子叔母が赤ちゃんの様子を見に行く事になり、
ちょうど夏の始まりの頃で、
サガリバナをはじめ、色々な花が美しく咲く時期と
重なるだろうから、と、母が誘いに乗り、
わたし、Giovanniも、
二人のオバさんたちのエスコート役として、
同行することになったのだ。
わたし、Giovanniも、早々から夏休みの申請を出し、
久々のちょっと長めの休暇をいただいて、
出発の日を、心待ちにしながら、最後の数日を過ごしたのだった。
関西空港から直行便で向かう母とは、
石垣島で落ち合うことになり、
わたし、Giovanniは、M子叔母と羽田空港で待ち合わせをした。
実は、3年前の冬に、M子叔母と母は、既に叔母の長女と3人で
西表島へ旅をしており、
その時は、母も羽田から飛んだこともあって、
わたしも空港へ見送りに行っている。
M子叔母とは、その時に、
やはり20年振り(祖母の葬儀のときだったか)に再会しており、
その時も、心密かに、随分お婆さんになられたと、呟いたのだったが、
今回は、その時からやはり、3歳分、
きちんと年輪を重ねられた印象だった。
さて、こんなお婆さんと、石垣へ到着するまでの数時間、
どうやって過ごすのか、と、心配したのだったが、
エアクラフトのシートにゆったりと腰掛け、
お話し好きな叔母の語る、様々な話に耳を傾けると、面白く、
いつまでも聞き入ってしまった。
GちゃんとMちゃんの馴れ初めを始め、
海外留学生を支援する財団で働く、長女U子ちゃんのこと、
捨てられた犬や猫を保護して里親を見つける仕事を
全くのヴォランティアでやっている次女N子ちゃんのこと、と、
家族の事を話される叔母が、
三人三様の自分の子どもたちの生き方を、
十分に理解され、激励したり、影でそっと支えたりされている事が
しっかりとした、叔母なりのヴィッジョンの中で、
明確に語られていた。
M子叔母は、
鳥取の旧い商家の長男である叔父に嫁いだのだが、
叔父は、自分が長男であるからという理由で、
実家の家業を継がなくてはならないという人生を拒み、
長年、銀行に勤務をされた人である。
昔の事なので、わたし、Giovanniも、
よくは知らないのであるが、
叔母の口ぶりからすると、叔母自身が
義理の両親と同居していた時代があったのだろうか?
あなたのおばあちゃんは、こうだった、あぁだった、という
昔の話の中に、わたしの祖母の事が幾度となく登場した。
祖母と叔母が、いわゆる世間で取りざたされるようなタイプの、
姑と嫁の間柄であったのかどうかは、知る由も無いが、
血のつながりはない祖母と、叔母自身の姿を、
重ねながら話をされることも、一度や二度ではなかった。
わたしのこういうところは、おばあちゃんに似たのかも知れないわね、
おばあちゃんも、こうして脚を投げ出して、
痛い痛いと、さすっておられたわねぇ、などと言われる。
叔母にとっては、自分が歳を重ねて行く中で、
高齢者としての一つのモデルが、祖母であるのは間違い無く、
たとえ、姑と嫁という関係において二人の間に何かあったにしても、
最期まで少女のように、また、歌人らしく生きた祖母の生き方に、
倣っていきたいと、考えておられるのではないかと思う。
M子叔母は旅の間中、何度も、長く生き過ぎた、と、
笑いながら言っておられた。
それでも、新しく買ってもらった、携帯電話とデジカメと、
悪戦苦闘しながら、
ゆるやかに、ゆっくりとではありながらも、
さらに、先へと進む事を止めず、歩き続けられておられる。
東京を離れること、はるか遠い、西表島への旅は、
意外にも、
自分に近しい人たちと、改めて出会う旅になった。

写真は、
サガリバナの木を眺めるM子叔母
次回は、Gちゃん。




















