去年の暮れに、今住んでいるアパートの、
二度目の契約更新をした。
旧いが、普請がしっかりしているのと、
何せ、陽当たりが良いことが気に入っていて、
出来ることなら、ここにずっと住んでいたい、
そう思いながら暮らしている。
わたし、Giovanniが、引っ越しって来て、
その数日後に、
階下の部屋に入居した人がいた。
建設現場でのおしごとなのか、
幅広のズボンが、よく干してあった。
見た目の厳つさと、裏腹に、
ゼンソク持ちか何かだったのか、
夜中に、彼の咳が聞こえることがあった。
母がゼンソクということもあって、
あのての咳は、聞いていてもこちらが苦しくなる、
そんな辛い音である反面、
何だか懐かしさもあって、
夜の寝ばなの現の中で、どことなく、
心地よい気持ちすらしながら、
彼の咳を聞いたものだ。
その彼が、ある日引っ越してしまってから、
何だか気が抜けたような、物足りない夜を
いく夜か過ごしたのだったように、記憶している。
わたし、Giovanniが、
このアパートに入居した当初から、
3部屋隣に住んでいた人が、
先週引っ越したようだ。
口をきいたこともなかったし、
たまに、通路や階段でばったり出会っても、
ニコリともしない、
都会的なおつきあいだったのだが、
彼の部屋の電灯が、我が家のそれと同様、
白い蛍光灯の色ではなくて、
温かみを帯びた、黄色というかオレンジというか、
白熱灯の色だったことがあり、
夜遅くに帰ってきたときに、
真っ暗な我が家の三つ隣の、
オレンジ色の光が反射している窓が、
お帰り、と、言ってくれているようで、
嬉しかったのだ。
昨夜も、帰宅して、
もう今はだれもいない、その部屋の、
暗い窓を見上げながら、
少し寂しいと、感じた、
わたし、Giovanniだった。
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